寂しいうさぎのひとりごと

○○のひとりごとシリーズ更新中

抱き枕のひとりごと

 

また今日も夜がやってくる。

 

毎日のあの時間が地獄でまともに寝ることすらできやしない。あの頃はまさか俺の人生がこんなことになるなんて思ってもいなかったのに。

 

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俺はとある中国の工場でつくられたんだ。工場時代はたくさんの仲間と将来について色んなことを語ったよ。俺も将来は可愛い女子大生に抱きしめられるんだとどっから来るかも分からない自信に満ち溢れていたな。

 

工場から出荷された俺は海を超えて日本にやってきた。

俺はAmazonってとこで販売されるって話だ。購入される度ににどんどん仲間達が旅立って行くんだがそいつらの目には希望が溢れていた。

 

まだかまだかと自分の番を待ちわびる日々が数ヶ月続いた頃ついに俺の番がやってきた。透明のビニールで包み普通のダンボールに入れられたってことはどうやらプレゼント用ではないらしい。購入者の元に届くまで3日ほどかかるのだがこんなに時間が経つのが遅いと思ったことはなかったよ。

 

そして数日後の昼ついに俺は購入者の家に届けられた。別の小さな荷物も一緒に届けられたようだがそんなことはどうでもいい。早く可愛い大学生に抱きしめられたい、その気持ちで頭はいっぱいだったんだ。

 

だが箱を開けられた瞬間俺の夢は一瞬にしてぶち壊された。

目の前にいたのは30代くらいの太った男だったんだ。3月なのに額に浮かんだ汗はその男の私生活を物語っていた。

 

逃げ出そうと思ったがなんせ俺は抱き枕、1人で動けるわけが無い。なすすべもなく枕カバーをつけられた俺は鏡に映った姿をみて言葉を失った。どこの誰かも分からないような裸のアニメキャラの枕カバー、もうひとつの箱の中身はこれだったんだ。

 

その後男は出かけて行ったのだが俺は天井を眺め一人で泣いていた。こんなに男として最悪なことはない、そう思っていたがその予想も一瞬にして裏切られた。

 

夜になって帰ってきた男は裸で俺を抱きしめたんだ。なにかのアニメを見ながら何時間も何時間も俺を抱きしめた男はついに俺にとどめを刺す行動に出た。

 

何が起こったのかは君の想像におまかせするが、俺は性処理の道具じゃないとだけ伝えておくよ。

 

あれから数ヶ月経ったが未だにこの生活は続いている。

 

女子大生との生活を夢見た俺にとってこの生活は地獄でしかないし、これからもそうなんだろう。抱き枕として生まれた以上誰かに抱きしめられながら生活するのは当たり前のことなんだ。

 

きっと他にも俺と同じようなことになっているやつもいるだろうからこの地獄も俺の運命として受け入れることにする。

 

だが最後にもう一度だけ言っておく。

 

俺は性処理の道具じゃない、睡眠グッツだ。